私たちが野宿の仲間とともに毎週土曜日の共同炊事(炊き出し)を行っている渋谷区立美竹公園は、現在大規模な再開発の危機にさらされています。この再開発計画について、先月3月29日(火)に開発、運営事業者が公表されました。不動産開発業者のヒューリックと、清水建設です。合わせて、2023年に建設を開始するというスケジュールも公表されました。
今回あらためて、再開発計画の問題点についてお知らせします。また、Twitterなどでもハッシュタグ #美竹公園再開発 で随時情報を発信します。
美竹公園とは
宮下公園から交差点をはさんで向かい側、青山通りに向かう坂の途中に渋谷区立美竹公園はあります。宮下公園や北谷公園が商業化された今では、数少ないふつうの公園です。のんびり昼寝やお弁当をつかう場所として、子供連れの散歩やダンスの練習場などとしてもよく使われています。
美竹公園の敷地のうち三分の二は、区役所移転の際に仮庁舎を建てるために締め切られ、仮庁舎が解体された現在も、都市公園法に違反して締め切られた状態です。この経緯については、渋谷地域で活動する野宿者等の団体である「ねる会議」のブログ記事をごらんください。
私たちのじれんは、1998年以降あしかけ25年にわたって、美竹公園で共同炊事を行っています。共同炊事では、毎週100人以上の野宿者、支援者その他の人びとが炊事、食事(※)、片付けなどをともに行っています。生きるために必要な食事の場であることに加えて、交流や情報交換の場、医療や生活保護などの公的仕組みにアクセスする経由地でもあります。共同炊事以外でも、年末年始の越年行動など各種活動をはじめとして、美竹公園は渋谷地域の野宿者にとって重要な生活の拠点のひとつです。
※ 「みんなで作ってみんなで食べる」が合言葉ですが、新型コロナ流行下の2020年以降、「みんなで食べる」ことは難しく、弁当を配布する形式で活動しています。
また、現在の美竹公園のように、いつでも誰でも居られる公園は、もっとも急迫した状況の人が命をつなぐためにも欠くべからざる場所です。住むところを失い、お金もない人はどこに行けば良いのか。役人はお題目のように「福祉を利用して」と繰り返しますが、夜間、休日、精神的な余裕がないなど、福祉事務所にたどり着かない状況はいくらでもありますし、福祉を利用するつもりがない人だっています。急迫した状況に追い詰められること自体がもちろん不公正ではありますが、実際に追い詰められてしまった人はどこかに居られなければならない。24時間誰でも使える公園は、そのような場所として必要です。
美竹公園一帯再開発計画とさまざまな問題点
美竹公園(区有地)、および隣接する都立児童会館跡地(都有地)、渋谷区役所分庁舎跡地(区有地)、合わせて約1万平米の敷地が、東京都、渋谷区による「渋谷1丁目地区共同開発事業」の対象になっています。2021年3月に事業実施方針が公表され、上述の通り2022年3月に事業者が公表されました。
事業の形態は、敷地に事業者が施設を建設し、それに対して70年間の定期借地権を設定して運営させる、というものです。美竹公園の部分には、地下を掘ってホールをつくり、地上部分をあらたに「美竹公園」とすることが要求されました。「美竹公園」は、これもまた民間の指定管理者が管理することとされています。
これら要求をもとにコンペが行われ、指名されたのが上述のヒューリック、清水建設からなる共同企業体「Link Park」です。その提案は概要だけしか公開されていませんが、地上14階の住居つきオフィスビルを建設するというもの。完成予想図では、美竹公園は単なるビル前広場、あるいは公開空地にすぎない空間にされてしまっています。
この計画には多くの問題点があります。まず第一に、公共の土地に公益性の薄いオフィスビルを運営させ、大資本を儲けさせることには、まるで妥当性が見いだせません。公共の土地はみんなの土地なのだから、公共の目的で、みんなのために使われるべきであって、お金にもとづく選別、排除を本質とする資本の論理を介在させるべきではない。しかも敷地を70年間の長きにわたり、21世紀末まで貸し出すというのは、ほとんど払い下げに等しいものです。企業にとってみれば、都心の一等地を土地保有リスクなく実質的に我が物にできるのだから、舌なめずりするほどおいしい話でしょう。腐敗という他ありません。
そもそも本来この開発計画は、児童会館跡地の都有地のみを対象とするものでした。それがなぜ、美竹公園を含む敷地に拡大されたのか、渋谷区まちづくり3課担当者Nさんの見解は「民間の事業が成り立つために(注: 大きな建物が建てられるように)事業用地を大きくする必要があった」というものです(2021年7月29日)。公共の土地をみんなのために使うことを考えるのでなく、企業の利益を第一に考えるやり方は、おかしいです。
このように美竹公園の土地を計画に組込、建物の一部をあらたな「公園」にするというアクロバットを実現するためのには、「立体都市公園」制度が用いられています。しかしこの制度は基本的に、土地確保の難しい都心部に公園用地を確保するための方策、他の施設との用地の共用を認めているものです(※)。美竹一帯の再開発のように、公園がすでに存在し、別の公有地も隣接するところに、わざわざ公益性の薄いオフィスビルを建てさせるために使うのは、制度の悪用、逆用とも言うべきです。
※ 「都市公園法運用指針」3版 pp. 33-34
再開発後の「美竹公園」の管理について、事業実施方針では、渋谷区が指名する民間の指定管理者が管理するものとされています。また開園時間は、夜間に閉鎖、施錠を行う可能性も含めて検討する、と渋谷区は言っています。私たちにはこの点で、宮下公園での苦い経験があります。
商業施設の屋上広場と化してしまった「宮下公園」は、開園時間が朝の8時から夜の11時まで。さらに年末年始には閉園し、商業施設は営業しているのに公園は使えないという、意味不明な状況になっています。また2020年の8月には、前述の「ねる会議」のメンバーが公園を利用しようとしたところ、商業施設の警備員に入場を阻止されるという事件が起きました(※1)。これについて渋谷区の中村公園課長(当時)は、商業施設を管理する三井不動産の事実に反する言い訳を繰り返すばかりだったということです(※2)。このように、公園の管理を民間に任せることは、営利施設との管理の一体化、公園を供用する立場にある自治体の責任のアイマイ化をもたらします。また、いつでも誰でも区別なく使えるという、公園のたいせつな役割を毀損するものでもあります。大問題です。
さらに今計画の募集要項は、公園のベンチを「寝そべられないよう」にすることを要求しています。これについて渋谷区公園課担当者のOさんは、「『東京都福祉のまちづくり条例施設整備マニュアル』(※)で推奨されている『両端には、手すり兼用となるような大きめのひじかけを設ける』に準拠した結果、「寝そべられない」という文言になった。」という意味不明な説明(2021年10月13日)。のちには「リクライニングチェアのような椅子ができても困るから」(2022年3月9日)と無理な言い訳をさらに展開しましたが、野宿者が寝られないようにする「排除ベンチ」の要求であることは明らかです。追い詰められて他に行くところがない人を、さらに追い出して居られなくするような考えにもとづいて、再開発を進めさせるわけにはいきません。
以上見たとおり、この再開発計画では、建設工事中、工事後ともに、美竹公園での共同炊事の継続は難しくなると考えられます。また、いつでも誰でも居られるという公園の大事な役割が損なわれる懸念も、きわめて大きいものです。私たちのじれんは、このような形での美竹公園一帯再開発に反対します。
美しい公園にすればいい。アメリカや欧米先進国に手本となる公園は沢山ある。何でもかんでも商業施設にしたがるのは後進国の発想。片隅にでもいいから、社会福祉施設(エリア)も造るようになれば立派な先進国なのだが、日本には無理ゲーなのかな?
最初から反対ありきの言いがかりの様な胡散臭い記事ですね。 区が土地を安く払い下げるのであれば怪しむ事も十分考えられますが、今回は定期借地です。区民の財産と言える公園敷地を貸し出して地代を徴収する事によって区の財政が潤うそして区民に還元される。良い事だと思います。 実際に反対したりデモをしてりしている人達は美竹公園の今までの状況を知っているのでしょうか。渋谷の繁華街で遊ぶ不良たちがたむろして治安が悪かったので、2013年に交番が出来ました。 それ以降、交番があるから浮浪者狩りなどの心配がなく安全だと考えた浮浪者達が集まってきました。浮浪者が集い場所を取り、中にはブルーシートでテントを広げて定住している人達もいました。 子供を遊ばせられるような場所などでは決してないし、近隣の住民にとっては危険地帯です。だいたい近隣の住民自体が昔から住む人はもうほとんど居なくなり、いまは億ションや高級賃貸に住む人ばかりで、薄汚くなった美竹公園など全く利用していません。 要するに私達地域住民にとっては綺麗に建て替わり新しく公園もできるのであれば大歓迎で有り、商店街の人も住人も誰一人として反対デモなどには参加していません。 実情も知らずにこういう事を書いている人が居るのを見ると本当に腹が立ちます。